高層マンションは上に建て増していくから、1戸あたりの価格は割安になる。これは現在の、人気の地域の高層マンション群にはあてはまらないようだ。私がなんとかローンを組んでやっとの思いで購入した高層マンションは、駅から近く買い物も便利で、マンション出入り口を利用する度に優越感に浸れるが、実は自分は低層階。エレベーターを使って上から人が乗ってきていると、エレベーターを停めたことに負い目を感じるような環境だ。それでも住みたかった高層マンション。概ね満足している。

しかし使い方が悪かったのか、最近鍵穴の調子が悪い。真っ直ぐさしこめなかったり、鍵自体は奥までささるのに、回せなくなるということがたびたびあるのだ。鍵穴用のスプレーというのも試したことがあるが、あれは一時的なものだし、使えば使うほど、鍵穴にはよくないのじゃないかと思うような気もしてきた。子どもの居ない私たちにとっては、子どもを通じたご近所付き合いというものもなく、大所帯の高層マンションゆえ、元々近隣住人との関係が希薄なので、他の家庭の鍵穴がどのような状態なのか、知る由もない。

毎回部屋に出入りするのに鍵穴をガチャガチャさせ、ヘタをすると1分以上入れないこともある。両隣とはほとんど面識がないから、そんな場面をもし見られたら、空き巣と思われかねない。なによりあと一歩のところでほっとできる我が家なのに、直前ですん止めだ。そんなストレスを考えると、かなりの出費が予想されるが、鍵穴自体を新しい物に交換してはどうかと妻が言い出した。私もそれには賛成だ。

どうせなら、安っぽい鍵穴よりも、高級感のある鍵穴を取り付けてみてはどうだろうか。階層や間取りでそれぞれ販売価格も違ううちのマンションだが、ドアや鍵穴はどこも一緒のハズ。こんな小さなところでもこだわりを見せてこそ、ここの住人らしく見えるのではないだろうか。そう言ったら、その案は妻に秒殺で却下された。